千代田区合気会では、ここ数年、会員の海外渡航熱がとみに高まり、海外合宿を念願していたところ、当会に、サイパン旅行関係の仕事をしている 今井さんが入会したこと、現在サイパン合気会を指導されている峰岸睦子師範は、当会指導者の一人山嶋さんらと共に故山口師範の稽古を受けた方でもあり、 旧知の間でもあることから、ついに平成12年4月14日から17日にかけて、サイパン合気会との合同稽古が実現することとなった。 当初は、5人も参加すれば上出来かと考えていたが、明治大学教職員合気道クラブほか、友好団体からの参加者も加えて、大島康義会長以下総勢15名で サイパンへ向かったのであった。
4月14日成田発、サイパンへは日中に着き、元気のある猛者は、
そのまま午後4時からの若者クラスの稽古に乱入し1時間ほど稽古した。
午後6時15分からの一般の稽古には全員が集合した。サイパン合気会のほか、
同じく峰岸師範が指導されているグアム合気会からの参加者も含めた、
大勢の仲間達と対面した。初めに簡単な紹介を行った。後で聞けば、
サイパン合気会の人にはこの間の正座が辛かったようで、「さすが日本
からきた方は違いますね。」といわれたが、実際のところ、我々は自己紹介
の際に立上がっており、座りつづけていれば、優位に立てたかどうか…。
サイパン合気会は発足してまだ5年程度の若い団体であり、経歴はそれほど
長くないとの事であったが、皆、力に頼らない魅力的な合気道を身につける
べく熱心に稽古をされており、長年合気道を続けている高段者にとっても、
楽しい稽古となった。サイパン合気会には、日本人、チャモロ人(現地人)、
フィリピン人等、多彩な人種で構成されており、各々の稽古は、日本語、
英語に、身振り手振りを交えて行っていた。稽古後は、皆で焼肉の食べ放題
へ行き、アルコールの勢いを借りたブロークン・イングリッシュなどを駆使
しながら、親睦を深めた。
翌日は、朝6時から有志による稽古。前夜のアルコールもあってか、 少数の参加であったが、常夏の島サイパンは、朝から暑く、汗びっしょりの 稽古となった。9時から12時までは、全員で一般・子供クラス等に参加した。 サイパン合気会のメンバーは、観光関係の仕事についている人が多く、 土日は休みでないため、大勢の参加は無理であったが、参加可能な方々に 集まっていただき、楽しく稽古を続けた。また、子供というと、普通は集中 せずにはしゃぎ回るものであるが、子供達の集中力の途切れない範囲で、 趣向を凝らして、稽古をつなげているのが印象的であった。
午後は、せっかくサイパンに来たので、島内観光をした。 峰岸師範自ら車を出して案内してくだされ、それに2台のレンタカーを駆使して、 ラストコマンドポスト、バンザイクリフ等の戦争跡地をみて感傷に耽ったり、 バードアイランド、グリットなどの景勝に感嘆し、そして何より、南国の青い 海と空・白い雲を満喫したのであった。もっとも、右側通行に慣れない 運転者は、方向指示機を動かそうとしてワイパーを動かしたり、果ては左側 を走行しかけたりと、苦労の連続のうえ、レンタカーの1台は、バッテリー不良 でエンジンが始動しなくなるというアクシデントもあって、後々の話題作りに 余念がなかった。

夕方は、サイパン合気会在籍の住友さん宅において、ガーデンパーティーをしていただ
いた。サイパン島の中腹の、普通の人なら、道を間違えたかと思うようなブッシュの中を
進んでいくと、開けた所に邸宅があり、それが住友さん宅であった。既にサイパン合気会
の人たちは集まっていて、料理を並べたり、本格的なバーベキューロースターで、肉を焼
いていたりした。こういう雰囲気は、アメリカのホームパーティーさながらで、日本では
ちょっと出来ない代物であって、うらやましい限りである。私達は、まず、住友さん宅の
屋上に上って、日没を見せてもらった。折り良く好天ということもあって、絵に描いたよ
うな南国のサンセットである。かすかに雲があって、完璧なグリーンフラッシュとはなら
なかったが、現地の人たちにとっても、珍しいくらい美しい日没であったそうである。一
同、ビール片手に、太陽が沈むにつれて、雲が、あたかも副笑いのヒゲから眉のように変
化していき、やがて彩雲と共に数本の光の筋が現れるさまに見入っていた。
日没後は、住友さん宅の居間やダイニング、テラスなどに、三々五々に散って、アトホ ームな交流をした。酒を飲んだり、写真を撮ったり、話が合気道に及ぶや、手を取って実 際にはじめる様は、万国共通であることが実感された。私達は楽しむだけで帰ってしまっ たが、跡片付けは大変であったろう。頭の下がる次第である。
翌日も、6時から朝稽古。例によって少ないけれど、ちゃんとサイパンの方にも来て頂 いた。道場の鍵を預かったため、毎朝早起きするはめになったエドさん、ご苦労様。 9時からの稽古は、グアムの仲間は帰っていなかったし、峰岸師範も体調を崩してしま って見取り稽古になったりと、現地の方は少なめであったので、我々は、先を争って彼ら との稽古を求めた。一応これが、今合宿の最後稽古で、ケガ人も無く、無事に終了したの であった。
午後は、海水浴や、ゴルフに行ったり、(夜の宴会に備えて?)休養したりと各自思い 思いに過ごした。海水浴やゴルフには、仲良くなったサイパン合気会の方も加わったりと、 現地の人との交流も交えて、楽しい一時を過ごすことが出来た。
夕方は皆でホテルのポリネシアンショーを楽しんだ。女性ダンサーに連れ出されて、器用に腰振 りダンスを踊ったTさん、記念に火のついた棒を持たせるだけのつもりだったのに、丈で 鍛えたとばかり、くるくる回して立派にファイヤーダンスを踊ってしまってダンサーを慌 てさせたSさんの二人は、チャモロの血が入っていれば、きっとスカウトされたに違いな い。それから、戦闘の踊りの際に、槍を突きつけられてうろたえてしまったKさんを、丈 取りの修行が足りないとIさんが叱っていたが、あの場で丈取りをしてダンサーを投げて しまったら、ショーは一体どうなったであろうか?
かくして、3泊4日のサイパン合宿は、私達にとても楽しい思い出を残して終了し、翌 日、無事に帰国したのであった。それにしても、合気道は、武道として求道的に緊迫感の ある熱中した時を過ごせる一方、試合がないために、とかく勝負にこだわって敵愾心を持 ったり遺恨を覚えることもなく、初対面の人とも楽しく稽古することが出来るという点で、 交流を計る上においても、非常に良いと思われる。このような交流がなく、単なる観光で あったとしたら、果たしてこれほど楽しめたであろうか。
今回のサイパン合宿は、我々にとって初めての海外合宿であり、失敗すれば、「もう2 度と海外には行かない!」となる危惧もあったが、皆から口々に、「又サイパンへ行きた い。」という言葉が出てきたのは、今回の合宿、そしてサイパンでの交流を心から楽しん だという証拠である。これは、一重に現地でお世話いただいた峰岸師範を初めとするサイ パン合気会、グアム合気会の方々のおかげであり、心から感謝するものである。